日本代表の三笘薫が所属するブライトンの監督ロベルト・デ・ゼルビ。2022年9月に前任監督のポッターが引き抜かれデ・ゼルビがブライトンの新監督に就任しました。就任6試合目のチェルシー戦で初勝利すると、その後も好調を維持しプレミアリーグ25節時点で8位まで順位を上げています。
デ・ゼルビは戦術家として知られており攻撃的なサッカーを好む監督ですが、どのような戦術で戦うのかまたプロフィールや経歴などについて紹介していきます。
ロベルト・デ・ゼルビ(Roberto De Zerbi) プロフィール・経歴
プロフィール
国籍 | イタリア |
生年月日 | 1979年6月6日 |
出身 | イタリア ブレシア |
身長 | 175cm |
選手時代ポジション | AMF |
監督成績 | コッパ・イタリア・セリエC :1回(2015–2016 フォッジャ) ウクライナスーパーカップ:1回(2021 シャフタール・ドネツク) |
経歴
選手経歴
- 1998-2001 ACミラン🇮🇹
- 1999 モンツァ🇮🇹(レンタル)
- 1999-2000 コモ🇮🇹(レンタル)
- 2000 バドヴァ🇮🇹(レンタル)
- 2000-2001 アヴェッリーノ🇮🇹(レンタル)
- 2001-2002 レッコ🇮🇹(レンタル)
- 2002-2004 フォッジャ🇮🇹
- 2004-2005 アレッツォ🇮🇹
- 2005-2006 カターニア🇮🇹
- 2006-2010 ナポリ🇮🇹
- 2008 ブレシア🇮🇹(レンタル)
- 2008-2009 アヴェッリーノ🇮🇹(レンタル)
- 2010-2012 CFRクルジュ🇷🇴
- 2013 トレント🇮🇹
左利きのファンタジスタとして知られていたデゼルビ。当時から創造性に優れたプレーを見せ15歳でACミランの下部組織に引き抜かれることになりました。しかしミランのトップチームで出場することは叶わずセリエCなど下部リーグのクラブでプレーすることとなります。2007–2008シーズンはナポリでプレーし、後半戦はブレシアにレンタル移籍。アヴェッリーノにレンタル移籍した後、ルーマニアの強豪クルージュに移籍。クルージュではチャンピオンズリーグにも出場しバイエルンなどとも対戦しています。その後2013年にセリエDのトレントに在籍し現役引退となりました。
指導者経歴
- 2013-2014 ダルフォ・ボアーリオ🇮🇹
- 2014-2016 フォッジャ🇮🇹
- 2016 パレルモ🇮🇹
- 2017-2018 ベネヴェント🇮🇹
- 2018-2021 サッスオーロ🇮🇹
- 2021-2022 シャフタール・ドネツク🇺🇦
- 2022– ブライトン🏴
元々監督になりたい気持ちがあったデゼルビは33歳の若さで選手を引退。現役引退直後はアマチュアクラブのダルフォ・ボアーリオで指揮をとり監督としての経験をつみます。
翌年には選手としても在籍したフォッジャの監督に就任し初のプロ監督としてデビューします。セリエCのチームながら高いポゼッション率で攻撃的なサッカーを展開し2シーズン目には昇格こそなりませんでしたが、セリエB昇格プレーオフにまでチームを導きました。
2016年には初となるセリエAのクラブ、パレルモを指揮することになります。しかし公式戦8連敗するなど12試合で9敗という苦い結果となり解任となってしまいました。
翌シーズンヴェネベントの監督に就任しますが、ここでも成績は振るわず最終的にリーグ戦最下位となりクラブは降格。デゼルビもクラブを去ることになります。
2018–2019シーズンにはサッスオーロで2年契約で監督に就任。サッスオーロではこれまでとは違い安定した戦いを披露し初年度は11位で終了。2シーズン目、3シーズン目は共に8位という成績を収めサッスオーロを退任しました。
2021–2022シーズンにはウクライナの強豪シャフタール・ドネツクの監督に就任します。開幕から首位をキープしていましたがロシアのウクライナ侵攻の影響により、リーグは中断しデゼルビもチームを離れることになりました。
そして2022年9月18日ブライトンに4年契約で監督就任しています。
ロベルト・デ・ゼルビの戦術は?
デゼルビは三笘薫も「戦術がある監督」と話すように戦術家として知られています。さらにグアルディオラと親交があり、かなり影響を受けているようで、グアルディオラのポジショナルサッカーのような、DFラインから細かくポゼッションし前進していくスタイルを好んでいます。ブライトンの監督に就任してからもポゼッションにはこだわり、危険なエリアでも繋ぐことを優先し縦パスを積極的に狙っていく場面が多く見られます。
そういったブライトンの躍進を支えるデゼルビの戦術はどういったものなのか、ブライトンの試合から戦術を分析していきます。
ボランチのレイオフパスでの前進
ブライトンのビルドアップの特徴は低い位置でも必ずパスを繋ぎ簡単に前に蹴ることはありません。そのためセンターバックやゴールキーパーは足元の上手さが求められ、相手のファーストディフェンダーを十分引きつけてからパスを出します。
そんなビルドアップの方法でよく見られるのが、ボランチ2枚が近い距離でレイオフパス(落としのパス)で繋いで相手ディフェンダーを剥がしていく方法です。センターバックの選手がボールを持った際にボランチのカイセドやマック・アリスターがお互いかなり近い距離を保ちながら降りていきます。そしてセンターバックからボランチの1人にパスをつけるとそれをワンタッチのレイオフパスでもう1人のボランチにつなげることで相手をかわしていくことができます。
たとえボランチにパスが入らなくてもボランチ2枚を囮にし前線まで一気にパスをつなげる効果もあるため、この方法はブライトンのビルドアップにおいてかなり重要な方法の1つです。
レイオフパスでのビルドアップを成功させるために選手のワンタッチパスの技術の高さが必須になります。
両ウイングの突破力を活かしたアイソレーション
デゼルビは第14節のチェルシー戦より、3バックから4バックの4–2–3–1の布陣に変更しています。このシステムにすることで両ウイングの三笘とマーチの突破力がより活きる形になりました。
三笘、マーチ共に個で打開できる能力が高くサイドからドリブルを仕掛けることで相手が同サイドにDFが集まってきます。サイドに相手DFを集中させることで逆サイドのウイングがフリーになりやすい効果が生まれます。そういったアイソレーション(特定のエリアに選手を集中させ別のエリアの味方をフリーにさせる戦術)で三笘やマーチが1対1の状況でドリブルすることができチャンスを創出することができます。
第19節のエバートン戦では相手を右サイド集中させることで左の三笘がフリーになりカイセドのサイドチェンジからゴールへつながりまさにアイソレーション戦術がハマった攻撃となりました。
アイソレーション戦術は両ウイングにドリブル突破できる選手がいることでより効果的になります。
三笘の中央でのプレー
ブライトンは前述した通り三笘やマーチの突破力を活かしたサイド攻撃が特徴的ですが、最近の試合では三笘が中央に入りプレーすることも多くなってきました。デ・ゼルビは三笘のサイドでのドリブルだけでなく、より様々なパターンで攻撃を展開できるように中央でのプレーも要求しているようです。
三笘が中央に入ることでサイドのスペースを左サイドバックのエストピニャンが使うことができ人数をかけて攻撃することができます。右サイドでもマーチが中に入り、右サイドバックのフェルトマンやランプティがサイドの幅をとって攻撃を仕掛ける場面が増えてきました。
FAカップのストーク戦では三笘が中央のレーンから裏で抜け出しアシストを記録しています。今後もドリブルだけでなくこのような中央から抜け出したプレーなど様々な攻撃のパターンが見られるかもしれません。
ロベルト・デ・ゼルビ フォーメーション
デゼルビは基本的にどのチームでも4–2–3–1のフォーメーションを多く採用している印象です。またウイングには突破力のある選手をおいて、後ろからの細かいパスワークでビルドアップする形にこだわりがあるようです。
サッスオーロ 4–2–3–1
サッスオーロ時代から基本は4–2–3–1の形が多くなっていますが、試合によっては3–4–3の3バックのシステムを採用することもありました。この頃からビルドアップ時はGKから丁寧につないで前進するポジショナルプレーが特徴的です。また、サイドバックが高い位置をとって攻撃することで5レーンで攻撃的なサッカーで知られていました。
シャフタール・ドネツク 4–2–3–1
シャフタール時代も基本は4バック。試合に応じて4–2–3–1と4-3-3のシステムを使い分けていました。またウイングにはムドリクなど突破力のある選手を起用しています。
ブライトン 4–2–3–1
ブライトンではこの形が基本形。三笘、マーチの突破力を活かしたサイド攻撃とボランチ2枚のビルドアップ能力の高さが特徴的なチームです。
まとめ
今回は三笘薫の所属するブライトンの監督、ロベルト・デ・ゼルビについて紹介しました。デゼルビは元々ポゼッション率の高いチーム作りが得意で、DFラインから細かく繋いでいく戦術が特徴的です。またウイングの選手の突破力を活かした攻撃が得意で三笘のドリブル能力を最大限に活かした攻撃を見せてくれます。
プレミアリーグで躍進を続けるブライトン。来季のCL出場権獲得の可能性もあり、シーズン後半戦も楽しみな試合が続きそうです。
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